上野地下駐車場問題        
    13 外部監査結果についての連絡会の声明文  
   
 
   
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2007年8月31日、「個別外部監査」の結果がだされました。
この外部監査を住民請求として実現ささせた、台東区民の運動の先頭に立った連絡会の大木了二代表と清水洋代表の記者会見での説明・発言要旨を紹介します。
記者会見は、9月19日、台東区役所内議会委員会室で行われました。 
 (監査報告書は台東区のHPの台東区議会のページからPDFでファイルをダウンロードできます)
上野地下駐車場問題 外部監査報告書についての記者会見要旨
9月19日、台東区役所 議会委員会室  
                目 次   
       大木 了二  代表委員(税理士)の報告

        清水 洋    代表委員(弁護士)の報告・説明
           連絡会の声明書について   (声明書はこちら

          1 いちばん大事な指摘

          2 委託事務費の増額問題について

          3 現場管理費の増額問題について

          4 大型公共事業の「税金垂れ流し」システム

          5 監査報告書の不十分な部分

          6 チェック機能を十分に果たさなかった区議会

          7 今後の課題と取り組みについて
 

   大木 了二 代表委員の報告

この「報告書」がどんなことを言っているのか、主な点をあげてみたいと思います。

私どもは4点ほど監査請求した(*1)わけですけれども、この「報告書」では、後半の2点については、「監査になじまない」ということで、意見をいただけませんでした。(*2)。
前半の2点についてだけでも、私たちが以前から問題点として指摘していた点をふくめずいぶん詳細な報告が出てます。その概要をご報告します。

*1 監査請求した4点
1 平成14年度の協定当時の工事概算お明細とその適正について
2 平成17年度の台東区負担分35億円増額の根拠とその適正について
3 今後の工事延長と工事費増額のおそれのないことの見通しについて
4 以上の建設費用等に関する監査のうえ、本事業がもたらす地域活性化の是非および完成後の運営維持管理の経済的合理性の是非からみて、「税金の垂れ流し」につながる本事業の遂行の中止、凍結について監査した上、適切な意見を付与されたい。

*2 後半2点を監査対象外にしたことについての監査報告書の記述
「上記の内3及び4については、将来の費用増額並びに完成後における運営維持管理の経済的合理性といった『将来事象に関するものであって外部監査になじまない』ものであるため、本件個別外部監査ににおいては対象外としている。

はじめに、「監査報告書」の40ページの最後のところに、「もし追加分の申請額の積算に関して技術的な価格管理を行っていれば、平成17年の追加変更額縮小されることが可能であったと思われる」という文言があります。これは、別の見方をすれば、《技術的な価格管理を行っていなかったために、今回の35億円という巨額な追加変更額が出てきてしまったのだ》といっているように読めます。非常に重要な指摘だと思います。

次に43ページで、この追加額「約3.500百万円の内、約57%(1.993.百万円/3.500百万円)は、当初から予測可能な不足金額であったと考える」と指摘しています。突然35億円という変更追加額出てきたわけですけれども、予測可能額は、その内57%を占めているということで、大変重要な指摘になっていると思います。

それから46ページには、当初予算になかった出庫口工事及び出入口階段工事について、「工事費用の追加(協定変更後の概算額718百万円)が発生することは予測できたはずである」「当該工事にかかわる将来の課題として情報の適時適切な説明がなされなかったことに問題があった」と指摘しています。これも大変重要な指摘だと思います。

また54ページでは、工事の増加費用とその妥当性の検討について、「区としても、東京メトロとJVの追加認定の取り決めの趣旨に沿った追加変更項目に関して、協定の中で詳細に取り決めるべきであった」「区としてコスト縮減のための十分な折衝を行う必要があったと思われる」と逆読みすれば、《十分な折衝を為ていなかった》と指摘しています。

つまり、追加変更工事について、協定中に詳細な取り決めがあるべきものが、取り決めがなされなかった、と言っているわけであります。

それから56ページでも大変重要なことが書いてあるわけであります。追加工事が増えたことによって委託事務費が8%オンされるということはいかがなものかといことで、「たとえば6%にするなど折衝の余地はあったものと考える」「実費相当額の計算書を受領し、その内容を十分に吟味した後において『8%が妥当である』と判断した上で、協定を結ぶべきであったと述べています。つまり東京メトロの言うがままに8%をオンしているのことはいかがなものか、と言っています。
こうして読んできますと、いろいろと問題点が出てきておりまして、私たちが主張してきました問題点の大部分がここに網羅されているわけであります。私たちは、この「報告書」を十分活用しながら区当局とも折衝し、話し合いをしていきたいと考えているところであります。

清水 洋 代表委員の報告・説明

この「監査報告書」がどういう意味を持つのか、そして、今後、これに対して同対応するのかについてお話します。
声明書」を用意しましたので、これをまず読んで、その中身を補充説明していくという形をとりたいと思います。

  1 いちばん大事な指摘

私は、いちばん大事な指摘だなと思うのは、監査報告書のいちばん最後の「プロジェクト・マネジメント思想の不徹底について」と言う80ページのところだと考えます。

監査報告書は、ほんらい民間であれば、こういうプロジェクトー「特殊任務」とらいていますけれどもーをやるときには、当然のことながら、最大の目的であるその任務の調査、目的についての設定、それから経費の上限=どこまでの予算を使うか、それから経費にかかわりあう終了期限=いつまでにやるのか、こういうことについて、ほんらい厳格な調査なり、管理が必要なのだと指摘しています。※1

ところが、台東区は、すべて東京メトロに委託=施工委託した。施工委託というのは、一つは設計監理もまかす、さらにひどいのは−これは我々も指摘したところですが−必要な工事費用の見積も東京メトロの基準によって東京メトロが試算していることです。この事業において台東区は、事業主体ではなくて、その事業の進捗について追認していく、まったく2次的な立場に立たされているのです。

当然のことながら、目的がはっきりしていない。名目としては、違法駐車の削減とか、あるいは、周辺地域の活性化とかいっておるけれども、この事業が完成する前と完成後を比べていかないといけないわけですが、事前の地域の調査がされていません。駐車状況についても古い資料にもとづいてやっているだけで、この事業を遂行するときにはその調査すらやっていないのです。周辺経済への寄与についても、そういった事前調査がされていないために、100億円以上の費用効果の事後調査もできない、というありさまです。

監査報告書は、今回の事業は「明確な目標が設定されておらず、そのため目標達成度を測ることができない」と明確にいってます。民間企業がやるプロジェクトと自治体がやるプロジェクトはどうしてこんなに違うのか。それは、税金という公金に対して区の執行部も議会も責任を持っていない、自分の金ではないという無責任さがあるが故の結果なのではと思われます。−垂れ流しというふうにいわれますけれども−と、そのことをこの監査報告書は指摘しています。※2

※1 監査報告書の指摘
「今回の(仮称)上野広小路駐車場整備は、一つのプロジェクト(特殊任務)としてみなすことができる。そして、一般に、ある組織が特殊な任務に取り組むために、専門家を集めて期限内に定められた経費で、この任務を遂行するための管理手法を、民間企業ではプロジェクト・マネジメントと呼んでいる。つまり、最大の目的は、当該特殊任務の経費への上限付けおよび終了期限の厳守である。具体的内容としては、徹底的な事前調査、明確な目標の管理、プロジェクト・マネジャーへの権限の集中、詳細な実施計画の策定、厳密な進捗(予算・納期・品質)管理、幅広い危機対策などからなりたっている。
このプロジェクト・マネジメントの視点から、今回の駐車場整備事業の事務手続きを見直すと、特に下記に掲記した事項について大きい問題があったと考える。」   同 報告書 83ページ

※2 監査報告書の指摘
今回の(仮称)上野広小路駐車場整備事業においては、基本協定と当初協定に基づき自治体(台東区)が東京メトロに施行を委託する形となっている。台東区は、追認する二次的な立場におかれている。このため、台東区による厳密なコントロールは、当初から困難な体制であった。今回の事業(プロジェクト)の施工者は東京メトロになっており、台東区のチェック体制が追認的であるため、納期・予算管理が厳密さを欠いていたと判断される。
台東区には、今回の(仮称)上野広小路駐車場建設を、期限内に定められた経費で遂行するためのプロジェクト・マネジメントの思想が徹底していたとは言い難い。   同 報告書 103ページ

   2  委託事務費の増額問題いついて

委託事務費の増額問題いついて、具体的にどういうことを言っているのか。
まず、当初予算がどのように作られたのか、そのことに区はどのように関与したのか。ジョイントアドベンチャー企業が作られていますけれども、それを執行したのは東京メトロ、全部委託ですから東京メトロであります。90数%の落札率、ここにも一つの疑問をもつわけですけれども、それ以上に問題なのは、一体どういう予算項目を与えたのかということです。

さきほど委託事務費の適正について、説明がなされていましたけれども、これは区議会での報告でもごまかされている。こういうようなごまかしが、台東区から区議会に対してなされていることについて区議会議員としては怒らなければいけない。

どういうことかというと、東京メトロに委託しているわけですから、当然、委託事務費がかかる。委託事務費は、これこれこういう費用がかかりますという積み上げ方式ではない。東京メトロの内規である10%を基準といsながら工事費の8%にした、その内容がどういうものかということは吟味しない、というわけです。

ところが、区議会に提出された当初予算では、委託事務費は計上されていなかった。その後8%が決まったといことから、委託事務費をどうやって入れるかということを考えた。当初予算は総額99億円と決まっていますから、そのなかにどういう費用をいれるかということを彼らは考えた。金額を上げるわけにはいかない。

そこだ考えたのが、追加変更工事予算の中に入ってくる、出庫口、出入り階段のスロープ、そういった工事費−−これは当初の予算項目にあったけわけですけれども−−それを落として、その部分を委託事務費に充てている。その言い方としては、『この出庫口ちか出入り口の階段というのは当初からよそくされていたけれども、まだ工事として未確定であったから、それは具体的な施工委託はしていないから外してある』とその施工委託していない金額の部分に委託事務費を当てて、当初の予算からあったかのように見せかけている。鑑査委員はこのことを看破して次のように指摘しました。※3

※3 監査報告書の指摘
出庫口工事および出入口階段工事を当初協定の施工の範囲から外すことによって、工事費用概算額に見合う委託事務費697 百万円を捻出し、平成14 年第1 回定例区議会で承認された予算の範囲内で協定を締結している。   同 報告書 45〜46ページ

ですから、議会に提出された予算と実際に工事協定をしたときの内容は違っている。金額は合っているが、費目が違っている。このようなことが区政として、また、区議会として許されるのでしょうか。

この点について監査報告書は、やわらかい表現でありますけが、、「情報の適時適切な説目がなされなかったことに問題があった」と指摘しています。
つまり、今回の追加変更による増額予算というのは、当初から予測されたものなのに当初予算にはいっていないものであり、この隠したものを追加せざるをえなくなったわけです。

当然のことながら工事の延長ということは、当初も考えられた。延長となれば、委託事務費も延長された工事費に対して、8%かかってきますから、当然上がってくる。監査報告書、『工事費が増加した時点における協定の協議においては、たとえば6%にするなどの折衝の余地はあったものと考える。』(報告書56ページ)と指摘したが、台東区は、頭から8%を認めて35億円に決めているのです。

  3  現場管理費の増額問題について

もう一つ、同じような仕組みが、現場管理費という項目にあります。
これは、追加変更予算のなかで92.6%という増加率で、全項目中もっとも大きい増加率、つまりほぼ倍になっています。
監査人は、この現場管理費というのは何なんだ、ということも追及したわけです。
結局、これは、委託事務費と同じように、工事費に一定の割合を掛けるということで、それぞれの費用の積み上げではない、したがって内容は分からない、明確な算出はできないという。※4

※4 監査報告書には、
『現場経費の内訳として現場管理費の増加額は461 百万円と大きいが、この増加金額の原因分析については、現場経費は東京メトロの積算基準により、総額に対する一定の割合で算定しているため、不可能であるとのことである。 〈中略) 総工事費の増加率(35.1%)と比較して現場経費の増加率(92.6%)は著しく高いもので、協定書は概算計算であり、発生ベースで精算すると当該金額の大幅な増加は、当初協定時の見込みが過少であったことは否めない。』   同 報告書 71ページ

工事の延長を誰が喜ぶかといえば、それは東京メトロであり、鹿島、大林組を中心としたジョイントベンチャーの企業である。後期を延長すれば、現場に立てている事務所経費が上がる。新たな税金の投入になることが分かっていながら、平気で工期2年延長ということを出してきた。そのチェックを区議会がしなかった、ということがいえます。

  4  大型公共事業の「税金垂れ流し」システム
咲きほどの「声明書」で指摘しましたけれども、今回の地下駐車場の事業計画というのは、大規模公共事業の中でよくいわれる「税金の垂れ流し」システム−−全国で同じようにやられているわけですが−−そういうものに一定のメスを入れる監査結果になっている、というふうに思います。

本件事業で台東区は、東京メトロへ丸投げし、一切の予算措置はその東京メトロの基準と算定した結果に準ずる、しかもそれをチェックする能力を持っていない、あるいは、チェックしようとしなかった。
監査報告書のなかでも指摘されていますけれども、区は、この事業計画の前にPFコンサルタンツ株式会社−−PC設計と呼んでおりますが−−にどれくらいの規模の事業になるか問いy設計を委託している。そして「概算工事費報告書」といのが出ている。つまり基本があるわけです。

ところが台東区は、この基本がありながら東京メトロが出してくる概算について、これを比較検討することすらやっていない。監査報告書は、そのことを指摘して、このPC設計が出した概算工事費報告書の額を基本にして慎重に審査すれば、もう少し費用の圧縮ができたと指摘しています。

そもそも、公共事業においては、形式は整えるけれども、実際の金の流れの審査をするということにはなっていない。そこに「税金垂れ流し」の構図があるのだろう、そういうふうに思います。

本件事業は、不忍池を掘って大規模駐車場をつくるという計画、あるいは、商店街の要求といってところから始まったわけです。池を埋めるのがいちばん安くできる、と言うことで飛びついた計画だった。ところが、最終的には、もっとも金のかかる高い機械式地下駐車場に、しかも、銀座線という現に運行している地下鉄やさまざまな埋蔵物があることをわかっている地下を掘り下げるmそういう困難なものになってしまったのです。

  5  監査報告書の不十分な部分

このように本件事業は、もっとも立地条件が悪いところに、最も多額な費用を投下するものになっている、しかも、事前に費用対効果や地域活性化に関する調査もしていない。これほど目的がいい加減なプロジェクトはない。まさに『はじめに地下駐車場ありき』と言うことが出発点になっているのであります。

監査報告書は、完成後にこれが稼働した後の収支がどうなるのか等については、触れていますが、他からもってきた数字をあてはめて『遜色はない』と簡単に述べているだけです。それどころか区の言い分を容認する方向で触れています。

また、われわれが個別監査請求の第4項目で、今後の「税金垂れ流し」にならないように意見を述べてほしいと述べたこと対して監査人は、これを監査対象から外しました。

これらは、、この監査報告書の不十分な部分にあたると思います。

  6  チェック機能を十分に果たさなかった区議会

公共事業に対して税金をどう使うかについて、監査報告書は、区民からの大切な税金を投入するのだから、もっと慎重な検討、確認、調査が必要だということを繰り返し述べています。ところが、その『慎重に』という姿勢が、区当局にも区議会にもまったく見られない。
本来、議員というものは、それをチェックするために区民から選ばれているわけです。しかし、台東区の区議会は、まったく問題意識を持たずに、逆に、フタをするような、あるいは『メクラ判』を押すような審議だけで通してしまっています。
区の負担が100億円をもっと超える金額になった場合に、あるいは、工期がどうなるのかと言うことに疑問が出て審議された場合に、果たして、事業計画は、その段階でスムーズに通っただろうか。私は、慎重な区議会であれば、いろいろな問題提起がされていたと思います。

しかし、残念ながら台東区議会は、十分なチェック機能を果たさなかった。そのつけが35億円という追加工事費の投入になっている。しかも、その上、完成後の運転開業になった後の収支がどうなるかについて、基本的な疑問もどうしても払拭できないのであります。

  7  今後の取り組みについて

この監査報告書は、不十分さは残しているけれども、全国で珍しい住民の監査請求でというかたちで始まった、その住民の意図には応えてくれていると評価しています。これに対してわれわれは、もっとこれを調査、検討、深めていく必要がある、そしてこの内容を広めていく必要がある、と考えています。

ただ私どもは、結果としての報告書しかもらっていませんので、これにどのような資料が付いているのか、ぜひともその原資料を専門家を集めて精査したい。そのためには、区に協力してもらうことも必要ですけれども、場合によっては情報開示請求等も使って資料を得ていく、そういうかたちで、少し時間がかかってもやっていきたいと考えています。

同時に住民監査請求、さらに行政訴訟という方法もあるわけですが、こういう区政の責任追及ということも視野に入れて、この監査報告書の調査、検討を深めてい行くなかで考えていきたいと思います。
 

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