上野地下駐車場問題        
    11 保育事業についての外部監査結果について  
   
 
   
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2007年3月27日、「保育事業に関する個別外部監査」の結果がだされました。
吉住弘台東区長から台東区議会議長〈高柳良夫氏)へ下記の報告が行われました。
1 提出物  台東区個別外部監査報告書  
        (A4  70ページ 表紙含む)
       台東区個別外部監査報告書 概要 
          (A4  10ページ)
2 監査対象 保育事業について


3 その他 外部監査人 宗和 暢之 氏〈公認会計士)
      補助者   布施 伸枝 氏〈公認会計士)
            谷川 淳  氏〈公認会計士補)
            山本 亨兵 氏〈公認会計士補


    監査の契約期間、平成18年10月28日から平成19年2月8日
    監査の実施期間、平成18年11月7日から平成19年2月8日記

連絡会は、この「保育事業に関する個別外部監査」も注視してきました。

1 まず、外部監査の実施ということから、監査にあたっては、行政側からの視点だけではなく、父母・保育士をはじめ広く区民の意見・要望を聞き、実情の把握に努めるなど、独立性、透明性、民主性が確保されたか?という視点です。

2 また、私たちの運動は、多くの区民の「税金は大型公共事業優先にではなく、〈保育事業を含む)区民生活・区民福祉優先にこそ使ってほしい」という願いから出発しており、この点からも無関心でいることはできません。
保育事業についての外部監査結果について   
今回の監査結果は、この上の2つの視点から見ると残念ながら、父母・保育士や広く区民の意見が聞かれたこともなく、保育の充実を求める区民の願いと相反する点が多く見られる結果となっています。

連絡会の見解は後日まとめますが、今回は、事務局がまとめた「監査結果について」の問題点の速報を以下に掲載します

◆3 「公立保育所は大きな負担」ー民営化を示唆?

1 実際に保育士・利用者〈父母)区民の声・意見が広く聞かれたか?

今回の外部監査では父母への意見聴取は行われていません。

今回の外部監査では、現場視察は行われました。

東上野保育園          区が直接運営する区立保育所
東上野乳児保育園        指定管理者が運営する区立保育所
橋場保育園           石浜幼稚園と幼保一体化事業を実施している保育所
花川戸保育園          私立保育所
マミーズバンド三ノ輪      認証保育所

また、多様な保育ニーズへの対応として
「就学前の児童がいる世帯に対して、保育サービスに関するアンケート調査を実施し、区民のニーズ・満足度の把握を行う必要がある」(同報告書18ページ)としています。

2 「視点は経済性、効率性、有効性」のみでよいのか?

上野地下駐車場建設問題(35億円の追加費用投入を含む)は、これまでにたびたび指摘してきたように、明らかな税金のムダ遣いです。しかし、「保育事業」の問題とは、効率性ーただ児童を一定時間預かるのにどれだけ費用を安くおさえられるかーという問題でしょうか?

「子ども達にとってよい保育をする」ということより、「費用対効果」「効率性の検証」「各保育サービスのコスト及び受益者負担の分析等人件費等の経費・保育料のことに関心がいっているのではないか?という疑問が、広く区民から出されていました。

◆0 「外部監査の視点」 

「核家族化の進展や女性就労者の増加など子どもたちを取り巻く環境がが大きく変化する中、台東区ではこれまで『次の世代の育成』を基本目標の一つに定め保育事業の充実に努めてきたところである。平成18年度の予算規模でみると、厳しさを増す財政状況の中か、自動福祉費は66億円と民生費の20%強を占め、うち7億2千万円が保育所費である。しかし、その一方で待機児童の解消や施設の充実など区民サービスのいっそうの向上を要望する声は多く、またその内容は多様化している。今後保育事業のより効果的、効率的な運営が求められるところである。そこで、保育事業に関連する一連の事業について委託契約等の合規性の検証のほか、事業の経済性、効率性、有効性の視点から監査を行うことにした。」 〈同 報告書 1ページ)

◆1 視点は〈保育サービスコスト)の面のみ?

「公費負担の面から見ると、乳児保育については、認証保育所や家庭福祉員の割合を高めることによって公費負担を軽減することが可能になるといえる。ただし、認証保育所では通所者の受益者負担額が年間600千円程度で、他の保育サービスの受益者負担額が200千円程度であることを考えると、約3倍程度の受益者負担額が発生することになる」〈同 報告書 23ページ)としています。

そこで、同報告書55ページでは、他区(墨田区・港区・渋谷区・千代田区など)認証保育所通所児童に対する補助金支給などの配慮も提言しています。
しかし、「財政的に余裕がある港区・渋谷区・千代田区においては、比較的高額な補助金が支給されているが、補助金を支給するとした場合、認可保育所通所世帯とのバランスに配慮する必要がある」(同 報告書55ページ)などと、コスト削減の視点しかありません。

認可保育所と認証保育所における実際の「保育の質」は全く問題とされていません。結果として認証保育所を増やすことがコスト引き下げになり、その結果生じる過重な通所者の負担は「財政に余裕のある範囲で」支援すればよいということになります。

東京都のアンケート調査でも、認証保育所利用者の67%が認可保育所に移りたいと希望しています、その主な理由は、「保育料が高い、園庭がない」などが上げられてる事実を直視すべきではないでしょうか。


◆2 保育料について ー 0歳児の保育料値上げを提起!

「台東区においては、平成9年度以降、保育料の改定は行われていない。公平性を考慮した保育料のあり方を検討する必要があると考えられる」〈同報告書 28ページ)と保育料値上げの検討の必要性を上げています。

「保育コストは、園児の年齢が低いほど高くなる傾向がある。これは、保育コストの大部分を保育士の人件費が占めるため、保育士の人員配置が手厚い低年齢時は保育コストが高くなる結果となるためである」とし、「現状の保育料表では、3歳児未満の保育料は一律に設定されているが、受益者負担の観点から、保育コスト都の対応を行い、0歳児、1歳児、2歳児の区分を設けて料金設定することを検討する必要がある」(同報告書30ページ)と、0歳児の保育料値上げを提言しています。


◆3 「公立保育所は大きな負担」 ー 民営化を示唆?

「私立保育所の職員は20歳代が半数を占めるのに対し、区立保育所の職員は、各世代ほぼ同じ人員数となっており、区立保育所の職員の年齢層は高くなっている。区立保育所は公務員の給与表に従った年功序列型給与体系であるため、年齢層が高いことは人件費の高さに直結する。」、「勤続年数が長くなることは、業務に関する習熟度の向上、幅広い経験に基づく保育の行われるなど、サービスの向上につながる面もあるが、勤続年数が長ければ長いほど保育サービスの水準が高いとまでは言えない」とし、「サービス水準が大きく変わらないにもかかわらず、人件費に大きな差が生じている事を考えると、区直営のみで保育所運営を行うことは財政的な面のみを見ると大きな負担になるといえる」と結論づけています。(同報告書34ページ)

「各世代ほぼ同じ人員数」で経験の異なる保育士同士の交流がより豊かにできる保育所と、経験の浅い保育士ばかりの保育所と、どちらが児童・保育士にとってまた、核家族化の進行したなかでの父母にとってもよりよい環境であると考えられるのでしょうか?

また、なぜ、「私立保育所の職員は20歳代が半数を占める」若手保育士さんばかりなのかは、言及されていません。
劣悪な労働条件が若手保育士の定着を妨げ、保育士がコロコロ変わってしまう民間保育所で児童も父母も大きな不安をかかえてしまう他区の例が、しばしばマスコミに大きく取り上げられていることも、この報告では、無視されています。
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