木曜の晩は仕事帰りにMOVIX川口で「キング・コング」を見てきた。「ロード・オブ・ザ・リング」の世界を描ききった才気を目の当たりにしては、ピーター・ジャクソンの次の一手が気にならないわけがない。・・・と思うのだけれど、予告を初めて見た時は「うわぁ、B級テイストたっぷりだなぁ」と思ったのも事実。それでも、あちこちから聞こえてくる評価が「かなり面白いらしい」というので、行ってきた。
いやー、娯楽大作って感じだわ。3時間という長尺を感じさせないストーリーテリング、演出の仕方はさすが。何より、全編に「これが本当に撮りたかった作品なんだ!」という喜びと、意気と、悪ふざけが満載なのだ。
大まかなストーリーは、こんな感じ。「大恐慌時代の真っ直中、1933年のニューヨーク。売れない喜劇女優のアン・ダロウ(ナオミ・ワッツ)は、不況のあおりを受けて働き先の見せ物小屋が閉鎖になり、職を失う。一方、投資家の出資を受けられなかったB級映画監督のカール・デナム(ジャック・ブラック)は、自身の野望である髑髏島(スカル・アイランド)での撮影を強行しようとしていたが、主演女優が降板して、映画のイメージに合う次の女優を捜していた。そんなときに、偶然アンはカールと出会い、不安を覚えながらも髑髏島を探す船に乗ることになる。そして、なんとかたどり着いた髑髏島で彼らを待ち受けていたのは、野蛮な島民と、有史以前の自然と生き物たち、巨大なコングだった・・・」
ビジュアル面から言うと、これまた気合い入りまくり。大恐慌時代のニューヨークというのは、きっとこんな雑多で、でもバイタリティに溢れていたのだろうなあと思わせるし、髑髏島は不気味で、そこに息づく生き物たちもリアルで、場合によっては目を背けたくなるほど真に迫っている(ああ、でかい○がアンの顔をなでる場面なんて・・・ぶるぶる)。個人的に笑ったのが、カーチェイスならぬ「ブロントサウルス・チェイス」。「うへっへっへ、こんなのありかよ〜!(爆)」というダイナミック&悪ふざけっぷりで笑える。
ストーリーは、思っていたよりずっとしっかりしているし、場面がニューヨークから、船での移動、島、そして再びニューヨークと移るのだけれど、その場面転換の見事さというか、その世界観もしっかり作ってあって、一本の映画で色んなテイストを味わえる。島に移ってからなんて、「あれ、前半どんな映画だったっけ?(笑)」と薄ら笑いしてしまうような冒険活劇調になってしまうがそれもまた楽しい。
何より役者一人一人がその役を楽しんでいるように思える。その中で主役のアン役のナオミ・ワッツと、映画監督のカール役のジャック・ブラックはハマリ役だと言えるだろう。アンは自分には運がないと思う繊細さと、コングと心を通わせる多感さをいかんなく発揮し、カールは、あくまでも映画を撮る、というその一点において偏執狂的なこだわりを最後まで見せる。
そして、忘れてはいけないのが、アンディ・サーキス演じるキング・コング。いやあ、「ロード・オブ・ザ・リング」のゴラムの時も「気がつけばCGキャラではなくて、役者の一人としてその演じるものに普通に注目」していたけれど、コングのこの人間以上に繊細な表情と感情表現はどうだろう! 実際のサルもこういう表情をするなあ!と思うし、照れたり、バツが悪そうにしたり、怒ったり、ふてくされたり、実に表情豊か。コングとアンがからむ部分はこの映画の一番のキモであるわけだけれど、ヘタな人間同士以上に感情のやりとりが感じられていい。VFX担当のWETAは今回もいい仕事をしているねえ。
脇役達もなかなか味を出している。前半と島を出るまでは、群像劇としても見ることができる。アンと劇作家のドリスコル、カールとスタッフ達、トーマス船長とクルー(特にジミー少年と黒人クルーのヘイズのやりとり)。
ダイナミックな映像がクローズアップされがちだけれど、これはコングとアンの心の交流を描ききった悲恋の物語として、素晴らしい作品だと思う。予告で見るとあまりそのあたりが伝わっていないように思えるので、ぜひ一度、二人の(一人と一匹の?)細かい感情のやりとりを見るために劇場に足を運んでもらいたい作品だと言えるだろう。いやあ、ピーター・ジャクソン、今回もGJ!だよ。で、「ホビットの冒険」はまぁだぁ〜?(笑)
投稿者 いづやん : 2005年12月22日 23:59 | トラックバック