国語辞典よりも、英和辞典よりも、漢和辞典が好きなのだ。・・・というのも、大学の専攻が漢文学だったから。今はもうページ一面の白文(レ点とか一二点とかが打ってない素の漢文)を辞書なしで読むことは出来ないけれど、たまに本や雑誌やテレビなどで目にする知らない単語や熟語、一文字だけの漢字を漢和辞典で引いては「ほほう、面白いなあ」と一人悦に入ったりしている。
今日も何気なく先日買った「奥様はマリナーゼ」をぱらぱらめくっていたら、ゆみぞうさんが父の日にお義父さんに上げた日本酒の名前「獺祭(だっさい)」が、意味がさっぱり連想できなかったので、漢和辞典を引いてみた。
「獺」(音はタツ、またはダツ)は「カワウソ」のことで、カワウソはたくさん魚を捕ったら並べる習性があって、俗にこれを「魚を祭る」と言うのだそう。それが転じて「獺祭」とは、詩文を作るのに、多くの参考書をならべて調べること、という意味なのだそうだ。知らなかったなあ。
さらに面白かったのは、例文に「李商隠為文、多検閲書冊、左右鱗次、号獺祭魚」(李商隠は詩文を作るのに、たくさんの書物を調べること、左右にそれこそ鱗のように並べる。ゆえに獺祭魚と呼ばれた)とあったことだ。実は李商隠は自分が卒論のテーマに選んだ晩唐の詩人で、難解な言い回しでとても苦労させられた。こんなつながりで久しぶりに李商隠の名前を目にするとは。
ちょっとした一語、一字の漢字の世界も、故事成語や、漢字の成り立ちを知れば知るほど、小宇宙のような広がりを感じる。気になる漢字がある人は、ぜひおためしあれ。知っているつもりの漢字、熟語でも、思わぬ話しが隠されていたりするので、ためになること請け合い! 今度余裕があったら白川静の「字統」が欲しいなあ。
投稿者 いづやん : 2005年12月22日 23:52 | トラックバック