そういえば先日、「北極星から十七つ先」を見に三軒茶屋のシアタートラムに行った時に、「ここってもしかしてはせがわさんの職場が運営しているのかも?」と思ったのだ。そうしたらその三日後くらいに「写真展を企画しました」というメールをはせがわさんからいただいて、やっぱりシアタートラムは、はせがさわさんの職場である「世田谷文化生活情報センター 生活工房 」(それともせたがや文化財団?)が運営しているそうな。そういうつながりが本当に面白いと感じる今日この頃。最近色んな人に会っておきたい!と思う原動力になっている。
さて、今三軒茶屋キャロットタワーの4階では「ただのいぬ。展」が開催されている。はせがわさんの職場が企画・主催している写真展で、はせがわさんのメールには「自分が今の職場で企画した展覧会の中では、最高の出来です」とあった。そんなこと言われたら、写真好きとして行かないわけにはいかない。渋谷での用事を済ませた午後6時過ぎに、会場へ向かった。
「ただのいぬ。展」の、「ただのいぬ」とは「只のいぬ」であり、「無料のいぬ」ということ。パンフレットには、「これは、飼い主から捨てられたり、迷子になって保健所などに保護、収容された犬たちの物語です。犬たちの行き先は、全国の動物愛護センターと呼ばれる施設。彼らの運命は、暗闇と光の二つの道に分かれています。でも、どちらへ行くか『ただのいぬ』には決められません」とある。
どちらへ行くかは、決められない。
そう、いぬたちには選択権はない。人間が全て握っている。会場に入ると、施設に預けられたいぬたちの姿がモノクロ写真で目に入ってくる。柵の向こうだったり、草の上だったり、子犬どうしで折り重なったり。キャプションとして添えられた詩が、見る人に単に「カワイイね」だけで終わらない何かを伝えている。写真だけでも伝わらない、詩だけでも伝わらない、それを相互に補完しているような、そんな奥行きがあった。それはなんでもないいぬたちの日常かもしれないし、この先の運命をほのめかすものかも知れない。見る人に想像を喚起する補い方。
先に進むと「光の部屋」と「暗闇の部屋」とそれぞれ指し示された部屋への分かれ道に来る。ここはぜひとも、「暗闇の部屋」から見て欲しいと思う。引き取り手のなかった犬は、致死処分される。その運命の一部。今までは透明なアクリルに入れられて掲示されていたキャプションが、何かを暗示するように錆びた鉄の額に代わって掲げられている。
キャプションにはそっけない文字がいくつか続く・・・8:55。9:03。9:05。ドリームボックス。13:48。そして、何も無い、真っ白なキャプションが続く。写真は、ぜひ自分の目で確かめて欲しい。これが現実だという重さ。真っ白なキャプションが二つならんだ最後の意味するところ。
続いて「光の部屋」へ。ここは幸運にも引き取り手の現れた犬と飼い主の写真が掲げられている。「暗闇の部屋」で我慢していた何かがカチッと音を立てて、涙腺のスイッチを押す。この明るい部屋には、先ほどの暗い部屋よりもすすり泣きの声があちこちから聞こえる。飼い主たちのうれしそうな顔と、安らいだ犬たちのたたずまい。それが先ほどまでの暗い運命とあまりにも対比をなしていて、あるいは眩しすぎて、涙が出るのだろうか。
簡単に「動物愛護」と叫ぶのは簡単かも知れない。だけれど、この写真展から得られるものはそんな単純なことではない気がする。はせがわさんも「社会的なこととしてではなく、ぜひ自分のこととして感じてほしい」と言っていたのが印象的だった。
残念なことに、会期が明日、25日までなのだ。台風が来ようが、ぜひとも足を運んで欲しいと強く思う展覧会だ。だけれど、色々今後の話しの広がりもあるようで、それにも期待したい。
最後に、上の写真とともに掲げられていた詩がとても心に刺さったので、紹介したいと思う。著作権とかに引っかかるようなら言ってください。
ふまれた草がいいました
痛いとか
悲しいとか
みじめなのではなく
ふまれなかった草と
何がちがうのか
それだけは
教えてほしいと
・・・それが「運」でしかなかったと言ってしまうには、あまりにも悲しすぎる。
切ないですね。
でも、これが現実。
http://www.theanimalrescuesite.com/cgi-bin/WebObjects/CTDSites.woa
こんなのも、あるんですよね。
ホワイトバンドならぬ、パープルバンド。
ホワイトバンド、最近恥ずかしくてしてません(^^;;
Posted by: leiwai : 2005年09月24日 21:44トラックバックありがとうございます☆
ふまれなかった草と何がちがうのか。。。
何も違わないのに光と闇に運命を分けられるいぬたち。
展覧会明日までなのですね。是非たくさんの方に足を運んでいただきたいです。
> leiwaiさん
なんか色んなの、出ているみたいですね。うーん。
・・・しかし、今になって涙が止まらない。
書きながら泣いていたよ。
> Donnaさん
初めまして、コメントありがとうございます。
とても心に響く展覧会でしたね。
何が違うのか、誰も答えられないでしょうね。
それだけにやるせないです。
明日で終わってしまうのが残念でならないです。
知人に宣伝する時間もない!と(笑)
はじめまして。「わくわく本」の海五郎といいます。
TB、ありがとうございました。
こちらからも送らせていただきました。
この写真展のことを考えると、気持ちが動揺してしまう。
いずやんの紹介してくれた詩はほんとにこころにささります。私は仕事がらこの詩を読むと利用者のことを考えてしまう。障害を負ったヒトと健常者、なにが違ったのかな。。。とかね。
どういう方向にも持っていけるテーマだけど、衝撃や同情ではなくきっちりアートとして表現してるのもすごいなあと。
悲しい現実もあったけど知った以上はちゃんと考えていこう。まずは出来る事。。。うちの愛犬ベルをタップリ可愛がろう!!!
いづやん、今日は忙しい中会場に足を運んでくれて、しかもすごくしっかり見てくれて、本当にありがとう。
それにしても、会場を後にしてから2時間足らずでここまで書いてしまうとは、さすがだね!
「『暗闇の部屋』で我慢していた何かがカチッと音を立てて、涙腺のスイッチを押す。」のは、俺も同じです。
企画書の段階から、それこそ何十回も繰り返し見ているはずなのに、いまだにダメです(^-^;;
「暗闇の部屋」は、服部さんいわく、殺処分されてしまった犬たちの「死の記録」ではなく「生の証」です。
そして、小山さんの「ひまわり」の詩は、彼らの「生きたい」という気持ちそのものだと解釈しています。
「光の部屋」の犬たちは、生きることを許されなかった「暗闇の部屋」の犬たちの生をも背負っているわけで、俺には、この部屋の幸せな光景が、「暗闇」の犬たちが死の直前に見ていた「夢」のように感じられてなりません。
俺がこの写真展を企画しよう、と思った直接の動機をカミングアウトすると、写真集「ただのいぬ。」を見たとき、自分ちのベルナー(バーニーズのMIX)が、愛護センターの柵の中で、俺らとの暮らしを思い出しながら再び「名前を呼ばれる」のを待っている、そんな光景がものすごくリアルに目に浮かんでしまい、居ても立ってもいられなくなってしまったからです。
(「ただのいぬ。」の部屋の子犬たちも、「暗闇」の犬たちも、俺にはみんなベルナーに見えてしまいます。)
ベルナーも、そしてすべての犬たちも、「暗闇」を背負うこともなく、生まれてから死ぬまでずっと光の中で生きていってほしい。
「主催者」の思いは、こんなところです。
また飲みながらでも話しましょう。
> 海五郎さん
こちらこそ、TBとコメントありがとうございました。
そちらにもまたお邪魔しますね。
> れいこさん
おお、コメントありがとうございますっ。
なんか催促したみたいで申し訳ないです(笑)
れいこさんは仕事柄障害を負った人と、そうでない人との違いを考えてしまう、
ということですけど、それも本当に何が違うのか、
考えても絶対に答えはでないですよね。
そういう意味では、本当に考えと答えとを見る人に委ねる写真展だと思うのです。
犬のことだけ考えなくてもいい、それがたぶんはせがわさんが言った
「自分のこととして感じて欲しい」ということの一端だと思うのです。
一つ言えるのは、まず自分に出来ることをしよう、ということでしょうか。
> はせがわさん
会期中にもかかわらず、こんなに長いコメント!ありがとうございますっ!
散髪にも行けずロン毛気味のはせがわさん、
「それもまたいいでしょ〜☆」とれいこさんは宣っておりましたが(笑)
相変わらずラブいですなぁ。
いや、それはさておき。
> 企画書の段階から、それこそ何十回も繰り返し見ているはずなのに、
> いまだにダメです(^-^;;
一度何かと、自分の感性と泣きのツボが合わさってしまうと、
もう条件反射のように泣けますよね。
あの暗闇の部屋で描かれていたのは、
「生の証」と「生きたいという気持ち」、確かにそうですね。
「ひまわり」と「たんぽぽ」を分けたものはなんだったのか、
それはあの部屋を訪れた人たちが自分自身で見つけて、答えを探すしかないでしょうね。
> 「暗闇の部屋」の犬たちの生をも背負っているわけで、
そうですね。だから、みんなあそこまで来て、初めて涙するわけですよね。
幸せな写真の裏に、「生の証」と「生きたいという気持ち」も一緒に写っている、
だから、余計に心に響くのでしょうね。
ベルナーははせがわさんの実家の犬ですか?
それとも新しく飼い始めたんですか?
やっぱり犬を今飼っている人たちにはさらに違った体験になるでしょうね。
写真集「ただのいぬ。」との出会いも、はせがわさんにとっては、
もしかしたら必然だったのかもしれないですね。
服部さんの写真家としての動機と、はせがわさんの企画者としての動機
から生まれたこの展覧会も、はせがわさんの昨日の話しを聞くにつけ、
思いもかけない大きなうねりとなりそうな気がしています。
自分もこれを書くことで、自分も含め他の人にとっても
何かのアクションに繋がればと思っています。
やっべ、また泣きそうになってきた・・・。
本当に今度、飲みましょうね。楽しみです。
しかし、この話題を酒を飲みながらすると、間違いなく泣きそうだ・・・(笑)
ベルナー=ベル=長谷川実家の犬ですよ。
いたずら好きな女の子(でかいけど)です。
お世話は実家でしているので、私たちはたまに散歩に行くぐらい。
ベルは潤さんが大好きなので
会うと、身も世もなくもだえます。
もだえ方が尋常じゃなくて、笑え・・・可愛いです。
おおっ、長谷川家実家には犬がいるんですね!
こりゃあ次お邪魔した時にいじりに行かないと!
ああっ、楽しみが増えた〜。
> 会うと、身も世もなくもだえます。
え〜、携帯動画とかで送ってください(笑)
わくわくしながら待ってます。
いづやん、こんばんは。
おすすめされたので、あたしも行って来ましたよ☆
ところどころ、ぽろりぽろりして、見ました。
あたしのBlogにUPしたのでお暇なら遊びに来てくださいね☆
> あゆさん
おおお!?
本当に行ってくれたんですね。
ちょっと感動しています。
あとでblogの方にもお邪魔しますねー。