「Photograph」の日本語訳は「写真」。でも必ずしも「真実を写している」わけではない。むしろ対象をデフォルメしたり、画面からいらないものを除けたりして、意図して画を作り出す。写っているものは撮影者の意図したもの、見せたい通りに写っているのだ。
そんな写真がやっぱり好きで、最近は自分で一眼を片手に撮りに行くことはめっきりなくなったけれど、本屋にいけば時間が許せば必ず写真集売り場には立ち寄る。そして年に何回かは素晴らしい写真集との出会いがある。
弓なりに欠けた月の表紙も美しいこの「BEYOND(ビヨンド)」は、過去数十年に渡って人類が太陽系の惑星やその衛星を探査した時に撮影されたものをまとめた写真集だ。そこには撮影者(この場合機械だろうけれど)の意図はなく、ただただ、星のあるがままの「真実の姿」が写し出されている。
ただそこにあるだけ。構図や意図、光を利用したテクニックなども必要ない。圧倒的な存在の前にはそんなものは必要ない。ただ、「真実を写す」だけでいい。
大型のこの分厚い本はどこをめくっても星の様々な表情に圧倒される。見慣れたはずの月の荒涼とした様。何かの気配を期待してしまう火星の赤茶けた大地。いつまでも見飽きることのない木星を取り巻く大気の模様。土星の輪の緻密さ。名前に反して水色の無表情な顔を持つ天王星。青の中の赤い斑点を持つ海王星。まだ見ぬ冥王星。そしてそれらを取り巻く衛星の数々。
一つだけ残念なのが、今現在も土星を探査中のカッシーニと、衛星タイタンに降り立ったホイヘンスが撮影した写真が収録されていないことだ。間に合わなかったのだろう。次の10年に同じような本が出る時にまた期待したい。
本屋で見かけたらぜひ手にとって見て欲しい(片手で持ち続けるにはかなり重いけれど)。その日は夜空を見上げたくなるはずだ。
この本が気になる方はこちらをどうぞ。
>>マイケル・ベンソン 「ビヨンド」