ちょっと前にネットを徘徊していたら、1月に新潮社から「星野道夫と見た風景」という本が出ると知った。著者は奥さんの直子さん。星野さんが亡くなってから8年の歳月が流れて、今だから書けるのかもしれない。直子さんが星野さんと過ごした5年半の回想を、撮影随行時の作品を中心に一緒に掲載したものだ。
うーん、良い本なのだ。なれそめから、結婚、日々の生活、撮影に同行した時のこと、子供のこと、奥さんでなくては書けない話がたくさんあって、読んでいて自然と涙腺がゆるんでくる。
それにしても、直子さんは結婚する前もした後もずっと星野さんのことを「道夫さん」と読んでいたというエピソードが実は一番心に残った。全編「道夫さん」という呼び方で通されていて、それだけのことなのだけれどとても優しい気持ちが伝わってきて微笑ましい。
星野さんが撮影した作品の中にちらほら混じっている、直子さん撮影の星野さんの姿とか、一緒に写っている写真だとか、素敵なカットもあるのもうれしい。
本の最後に、以前ここでレビューを書いた「ブルーベア」の著者であり、星野さんのガイドを務めたことのあるリン・スクーラーさんが直子さんにこう聞く場面が書いてある。
『「ナオコはクマを許すことができたのか?」私は「クマを許せないと思ったことはない」と答えました。』
・・・迎えに行った星野さんの顔に苦痛の影が少しもなかったから、ということからこう答えた。その部分だけで、単なる一ファンに過ぎない自分も前向きな気持ちになった。救われたというと大袈裟かもしれないけれど、そんなような気分。文章量はそれほど多くはないけれど、直子さんと星野さんの人柄が伝わってくるいい本だった。
この本のことを書いていて、はたと思い出したのが、りかーちんにメールで教えてもらった「コヨーテ」という雑誌。旅について考える雑誌、という感じだろうか。この第2号はすでに去年の10月に発売されているけれど、バックナンバーも入手可能だ。
この雑誌の存在を教えてもらった時に思ったのが、「星野さんの文章はもうほとんど出尽くしているからあまり目新しいことは載っていないだろうなあ」ということだった。しかしいざ手に取ってみると、実にズルいのだ。いやいい意味で期待を裏切られたというか。「星野道夫はどんな本を読んで冒険に出かけたのか」という主題の元に、彼の本棚の700冊の蔵書リストが載せてあり、「冒険に向かう20冊の本」というコーナーでは彼の文章や撮影行に少なからず影響を与えたであろう本の解説がある。
生前、雑誌「Swicth」での特集に、インタビューの余興としてその場で好きな本を10冊上げてもらい、簡単な思い入れなどを語ってもらった、という文章も載っている。その他にも興味深い文章が載っていたり、「星野道夫のフェアバンクスと料理案内」なんていう付録まで付いている。一冊の雑誌にしてはかなり内容の濃いもので、むさぼるように読んだ。
そういえば、以前星野さんの本を上げて気に入ってくれたしーしゃんが、この本を持っていて、家に遊びに行った時に「これ知ってる?」と出してきた時はうれしかったなあ。自分の好きなもので、誰かと繋がっている、というのはなんて素敵なことなんだろうと思うよ。
この二つの本が気になる方は、こちらをどうぞ。
>> 星野道夫と見た風景
>> コヨーテ NO.2
むむ、おいらもちょうどの本読んでた・・・
( ゚∀゚)人(゚∀゚ )ナカマー!
なかなかよい本ですな
道夫さんの全集が3巻までしかブックオフに入ってない・・・まぁ、普通のはそろってるからいいんだがw
おお、アナタもですか!
( ゚∀゚)人(゚∀゚ )ナカマキター!
全集、実はそろえようと思ってまだそろえていない。
全巻そろえると講演の模様を収めたCDがもらえる、っていうのをやっていたんだけど、
のんびりしてたら終わってた〜(T_T)
実はね、結構持ってない本あるんだよね。
朝日新聞社の「星野道夫の仕事」全四巻とか。こっちのほうが
先に欲しいなあ。
まあこれからちびちび集めていく楽しみがある、ということで焦ってはいないのだけどね。
いづやんさん、初めまして。
この度はトラックバックをありがとうございました。
(アラスカ逃亡中で気づくのが遅くなって申し訳ありませんでした。)
いづやんさんも星野道夫さんのファンでいらっしゃるのですね。
私はまだ件の書籍を入手できずにいるのですが、あの一言はリン・スクーラーさんのものだったのですか!
書店に赴き、帰ってきたばかりのアラスカに思いを馳せつつ拝読したいものです。
Coyoteの記事や小冊子は私もジックリ目を通しました。
余談ながら、あのフェアバンクス紹介マップにいくつか場所の間違いを発見してしまったりして…そんなのはほんの些細なことかも知れませんが。
今回、あのマップに載っていたB&Bに泊まってみようかな?と思って年末にメイルを入れたのですが、全く音沙汰がなくて残念に思っていました。
出発間際の2月初旬に「3月1日まではクローズです」との返事がようやく届きましたが、長らくどこかにお出かけで、メイルチェックもされていなかったようでした。
なんともアラスカらしい…なんて思った出来事でした。
>日蝕貧乏知恵者猫さん
初めまして! コメントありがとうございます。
アラスカにいってらしたんですね。いいですねえ!
もう何度も行ってらっしゃるようホントにうらやましい・・・。
金銭的にとか時間的になかなか簡単に行くことができないアラスカですが、
星野さんの言う「行くことの出来ない遠い自然」を思って、それだけで心が豊かになるような気がします。
もちろんいつかは行ってみたいですが・・・。
B&Bのエピソードもなんともアラスカらしい!(笑)
アラスカはまだまだ夜の季節ですよね。
ユーコンのブレイクアップとか、見てみたいなあ。
気づいてみたらアラスカの地を踏んで16〜17年、毎年の里帰りが私の暮らしの唯一のイヴェント(?)のような感じになっています。
でも、広大なアラスカの小さな点のような場所しか知らないのですけれども…。
ご存知と思いますが、距離としてはハワイよりも近いアラスカ。
直行便ならば気軽に行けるくらいの時間で済みますが(6〜7時間)、夏は週に1便、冬は今シーズン初めて成田〜フェアバンクス直行便が3往復したものの、搭乗できるのはツアー参加者のみで、結局のところ1日がかりの遠い地となっています。なんとか直行便に潜り込んで往復してみたいものです。
星野さんの「行くことができない遠い自然」は、私にとって心が豊かになるだけでなく生きる糧にすらなっているのかも知れません。
カリブーの営巣地として知られるアラスカ北部のANWRでは新たな油田開発が浮上していますが、都会の淀んだ空気の底で酸欠金魚になっている時に「あの場所が無事ならば、あの場所があればまだ生きていける」とすら思えるのです。
アラスカでは急激に春が歩みを進めています。
フェアバンクスの今日の昼間の長さは11時間18分。11時間49分と現段階では東京の日脚のほうが長いですが、高緯度地域のフェアバンクスでは1日に7分近くも昼間の時間が延びていく為、あと1週間もすればフェアバンクスのほうが昼間が長くなります。
さすがにユーコンやタナナ河のブレイクアップはまだ先の話かと思いますが…。
最後になりましたが、拙blogなどでもご紹介しているのでお読みいただいたかも知れませんけれども、本日フェアバンクス在住の知人がTV番組に登場致します。
もしお時間ございましたら、アラスカの生活を満喫している彼らの様子をご覧下さい。
http://sky.ap.teacup.com/lummox/64.html
毎度、長文の投稿で申し訳ありません。
P.S.
いづやんさまは、写真関係のお仕事をされているのでしょうか?
毎年行ってらっしゃる、ということは、もう17回もですか!
すごいですねえ、いいなあ。
フェアバンクスへの直行便があるとは知りませんでした。
何度も乗換をしていく遠いところ、というイメージが未だにありますね。
ハワイよりも近かったのか・・・勉強になります。
> 「あの場所が無事ならば、あの場所があればまだ生きていける」
なんとなく分かります。アラスカにはもちろん行ったことはないですが、
自分にとってのそういう場所は小笠原なんです。
あの青い海があそこにまだあるから、とたまに思い出して頑張れる、というような。
極地は色んな物が急速に動いていきますね。
そういう四季の移り変わりもまた、とても魅力的に映ります。
> もしお時間ございましたら、アラスカの生活を満喫している彼らの様子をご覧下さい。
あ〜、すっかり見忘れました・・・・(T_T) ビデオも壊れてるし。とほほ。
> いづやんさまは、写真関係のお仕事をされているのでしょうか?
そうですね、まあご想像にお任せします(笑)
Posted by: いづやん : 2005年03月14日 23:42