あれからどれだけの日々が過ぎただろう。
軟禁状態で辱めを受ける日々が続いた。
わたしが強いて正気を保ち続けるのは、全て誠ちゃんのため。
誠ちゃんは…もう…四肢もぼろぼろで…大事なお薬を切らしたせいで、再び彼の内的世界は崩れてた。
早く…早くここから逃げ出して病院へ行かなきゃ…。
心も身体も正常な人に手当してもらうのよ…。
だからわたしは頑張って生きているの。
再び貴男と愛し合い慈しみ合う為に。
セージは、そんなかつての親友…と呼んだ誠二を見おろし、馬鹿笑いしたかと思えば蹴ったりと暴行もしていた。
わたしは…わたしは自分の2つの身体を同時にいたぶられている気がして…悔しくて悔しくて…。
でも、もうわたしの喉は潰されて何も言えない。
『人魚姫だね』
セージは嫌な笑みを浮かべて言い放つ。
わたしはあいつの手の皮を食いちぎる。 そこからは…青い液体が溢れ出した。
すでに、あいつは人間なんかじゃなかった。
殺してやる。
殺してやる。
こ、ろ、し、て、や、る。
ゲス、クソ野郎、鬼畜、悪魔、青い血の流れる化け物!!
ある時、この山荘には裏口がある事に気づいた。
どこまでもバカなセージ。
あいつの可愛がるカラッポ女なんか、のんきにトランプ遊びなんかに興じてる。
わたしは、四肢と鎖をひきずりながらも、その外界─まともな世界─への扉を開いた。
けれど、
そこは鼻を突く死臭とホルマリンの匂い。
視界は全部、は だ い ろ の
そこにあったのは、
そこに…あった…のは、「わたし」。
わたしの頭、わたしの髪、わたしの眼球、わたしの胸、わたしの胴体、四肢に内蔵、ばらばらの骨格まで、ああそして頂点から見下ろす、わたしの…顔。
生き生きとしながらも死した虚ろな微笑みを浮かべて転がって…。
わたし、わたしじゃない…こんなの断じてわたしじゃないわたしの首わたしの。
わたしの身体の断片の山に埋もれたわたしのわたしじゃないパーツのジャンクのわたしの生首………。
こ、れ、は。
わ、た、し、の、や、ま。
わたしのやまの頂に据えられたそれと目が合った。
視線を通じて、彼のラボに蔓延る無数の虫達が私の目から入り込み皮膚を破り脳を侵食する…そんな妄想に襲われた。
ヒトはきっと、この世の見てはならないモノと向き合った時、叫ぶよりも逃げるよりも、
ただただ強く静かな戦慄を覚え硬直する。
…狂ってる。
あの男はどこまでも狂ってる!!
く、るってる しね、し ね。
あっ
いや、くるしい、そんな、くびの、くさりを、ひっぱら ないで…
やめ て
く るし い…
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