【人に非ぬもの】


 屋根からトントンと音が聞こえてきます。
 「あめ」が降ってきたのです。 博士が教えてくれたので知っています。

 そんな中、博士は倒れている人達に向けて言いました。

『くくっ…、ricoよ…。
 売女に墜ちたお前でも、DNA採取の作業は楽しめそうだ。
 身体中のあらゆる場所から、あらゆる手段で採取してやる…ジェミにも勉強させてやるよ』
『え、ホント!?
 私博士以外の人間の事って何も知らないから!』
『ああ…色々な感情、表情、身体反応を見られるだろう。
 …その透き通った目で、全部見てやり給え』
 博士の口元が暗く歪んでいました…それでもとても切なくて。
 博士のきもちが解るのは、私が博士の『種』を主に生まれた双子だからなのかな。
 って、最近、おもう…。

『…ま、誠ちゃん?
 君の姉さんは僕の趣味でしばらく弄ぶ気だけど、今の君なんかはどうでもいいんだよね』
 あれ?
 言うと博士はいつも大事にしてる試験管を机の角に叩きつけて割っちゃいました。
『お前ごとき、DNA採取なんざこれで十分さ…』
『ヒッ…ぅ、やぁ、あっ…あああああーっ!!』
 ricoさん、声出てます。
『あっ』
 私も同時に見ました、博士は誠ちゃん、とか言う人の頬を撫でると、割れた試験管を片目へ突き入れました。
 いたい、って言うのかな?
 その人はricoさんよりももっとすごい声を上げてのたうち回ります。
『お前の眼球なぞ、きれいに保持する価値も無い…』
 一面に流れ出す血をチューブで吸い上げたりガーゼに染み込ませたり。
『ん、このガラスに付着した組織も使えそうだな…』
 やっぱり、博士って難しい事を真面目に考えて実験してる所が一番かっこいいな。
 でも、なんだかあの人達がかわいそうになってきたよう…。
『博士、あの人達も人間なんでしょ? だったら…』
『ふふっ、いいや違うよ?
 あれはね、モルモットと言うヒトによく似た動物なのさ、実験されるために生きてるんだ』

 へえぇ…。
 私は目を丸くするばかり。 人間っぽいのに人間じゃない動物っているんだね!?
 ひとつは血塗れて床をのた打って、もうひとつはかすれた声を絞り出して鳴いてる。

 …とてもかわいそうな生き物。