2006年08月08日

旅をした人 - 星野道夫十周忌

hoshino_jusshuki.jpg銀座の松屋で開催中の「星野道夫写真展 星のような物語」を観てきた。今日8月8日で星野さんが亡くなってから丁度10年。会場には平日にも関わらずたくさんの人が足を運んでいて、この10年という歳月は彼の写真と文章を埋もれさせるどころか、より深く理解する人たちと、新たに惹きつけられた人たちとを生み続けているのだと、今さらながらに感じることができた。

写真の展示数は前回の「星野道夫の宇宙」の時より多いだろうか。カリブー、グリズリー、ムース、ホッキョクグマ、ザトウクジラ、アラスカで暮らす人々、と言った大きなテーマに沿った展示がされていて、合間にも様々な動物、植物、アラスカの自然がちりばめられていた。

この10年を振り返った時に、星野さんの写真と文章が自分に与えた影響は計り知れない。そのいちいちを挙げていったら、どうにも青臭いものになってしまうのでやめにしたいけれども、やはり「大切なのは、出発することだった」という言葉通り、思うより先に行動に移していかなければ、という励ましを受けていたように思う10年だった。それを実践できていたかはともかくも。

会場で買った文庫版「旅をする木」(ハードカバー版はすでにもう何年も前から本棚にあるのだが)を読んでいて、「アラスカとの出合い」の章で、星野さんは自分がアラスカに関わるきっかけになった一枚の写真を撮った写真家と偶然会うことになる話を書いている。その章の結びにこうある。

「人生はからくりに満ちている。日々の暮らしの中で、無数の人とすれ違いながら、私たちは出会うことがない。その根元的な悲しみは、言いかえれば、人と人とが出会う限りない不思議さに通じている。」

彼をアラスカにいざなった一枚の写真。彼が伝えてくれた極北の地と人の生き様。星野道夫という希有の存在の写真家を知ることで得た、人や物事との出会い。その限りない不思議さを、会場にいる間中ずっと考えていた。

投稿者 いづやん : 2006年08月08日 01:30 | トラックバック
コメント

こんにちは
私が会場に行った日もたくさんの人が来ていて、
小学生くらいのコが感動しているのを見て
すばらしさというものは分かるんだなあと思いました。
そうして「新たに惹きつけられた人たち」というのは増えていくのだなと思います。

私はといえばこの10年で星野さんを理解できたかといえば・・・より深さを感じるようになりました。
こころの中でずっと生きつづけているようにも感じます。
これからもきっと、大きくなりつづけるんだろうな、と思います。

Posted by: なお : 2006年08月08日 18:35

本、読み終わったんです!

アラスカは、わたしにとって全く未知の土地でした。
四季があるんだってことも、知らなかったんです。
オーロラの美しさ、撮るときの興奮、自然と向き合うこと、動物たちと共に生きていくこと。。。
未知であったから、それは衝撃的でした。

そして、なによりすごいと思ったのは、星野さんの行動力。
素晴らしい出会いにめぐりあったのも、行動があってこそだったんですよね。
星野さんが遺された功績は偉大だなぁ、と思いました。

以前は、いづやんさんが星野道夫さんファンである理由もよくわかってませんでしたが、今ならちょっとわかってきたような気がしますよ(^^)
もちろんこれくらいでわかった気になるのは失礼だと思うのですが。

写真展、すばらしかったんですね!!
う〜ん、わたしも見てみたかったです!!

Posted by: ハルナ : 2006年08月08日 21:32

> なおさん
いらっしゃいませ!
前回も、今回も印象的だったのが、
幅広い年齢の人たちが見に来ていた、ということでしたね。

それはやっぱり星野さんの写真も文も、
一過性のものではなくて、普遍的なものを持っていたからだと思うんです。

より深さを感じるようになった、とおっしゃってますが、
星野さんが本の中でも書かれているように、
何か綺麗なものを見た時に、「自分が変わっていくこと」で人に伝える、
そんなふうに心の中で大きくなっていったとしたら、素敵なことですよね。


> ハルナさん
お、早いですね!
アラスカにはある意味で、日本よりもはっきりした四季があるんですよね。
本当に、どこからどこまでという線を引いたような四季が。

知らない土地が、たとえ行ったことがなかったとしても未知でなくなる。
星野さんも本の中で
「人間には二つの自然がある。一つは日常の中で触れることの出来る自然。
もう一つは行くことができないが、心に思い描くことの出来る遠い自然」
というようなことを言ってます。
ハルナさんの心の引き出しに思い描くことの出来る遠い自然が増えたとしたら、
これはその本を紹介したかいがあったというものです(・∀・)

星野さんの行動力は何度本を読んでも驚かされます。
やりすぎだろってつっこんじゃう時さえあります(笑)

> もちろんこれくらいでわかった気になるのは失礼だと思うのですが。

いえいえ。入り口から入ってくれたなら、もう後はその人の感じ方次第ですよ。

写真展は午後8時くらいまでやっているので、
今週午後早くお仕事が終わる時に足を運んではいかがですか?

Posted by: いづやん : 2006年08月09日 00:37

アラスカ・・・・・本当にすばらしいとこだと思いました

Posted by: なお【中学生】 : 2008年01月21日 00:22
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