同じ日に、同じことを考える日が、一年に一度くらいあってもいい。もう何年も前からそうしていて、忘れそうになるけれど、やっぱり思い出して、考える。答えを探しているわけではない。ただ、その人と、その人の為したことを偲ぶだけ。
今日8月8日は、星野道夫さんの9回目の命日。この特別な日に、今まで買わずにいた総集編とも言える写真集「星野道夫の仕事」の第一巻を買った。これは星野さんの亡くなった後に敢行されたもので、全部で四巻ある。
第一巻目のテーマは「カリブーの旅」。カリブー(北極トナカイの一種)はカナダ、アラスカの北極圏を一万キロもの距離で季節移動する。その移動の様子を撮影するのが星野さんのライフワークの一つだった。だが、カリブーの移動ルートは毎年違っていて、予測が全くつかない。荒野に一ヶ月、二ヶ月とキャンプを張っても全く見つけられないこともあるだろう。それでも、この写真集には一万年前から変わることなく続いているカリブーの季節移動が写し出されている。
極北のインディアンの言葉に、「風とカリブーの行方は誰も知らない」というのがある。毎年カリブーを追っているアラスカの狩猟者達でさえ、カリブーがどこを通るのか分からない。それでも、星野さんは山を張って、待って、撮って帰ってきた。写真の裏に隠された彼の情熱と、努力と、運に感謝しながらページをめくる。
でもめくるたびにそれもどうでもよくなってしまって、ただただ、命の壮大な行進に目を奪われるだけになり、自分の乏しい想像力では補いきれない自然の営みを見るのに夢中になる。
投稿者 いづやん : 2005年08月08日 23:55 | トラックバックこんばんは、今日は星野さんの命日だったんですね。僕も星野さんには多いに影響を受けていますが、命日は知りませんでした。「星野道夫の仕事」は買いました、全巻持っていますよ〜(^^;
星野さんの写真は本当に特別ですよね。見れば見るほど発見があるというか、ものすごく深いのでただただ驚くばかりです。
Posted by: sloth : 2005年08月09日 03:59> slothさん
いらっしゃいませ。お久しぶりです。
星野さんの命日は語呂が良いと言うこともあるし、
亡くなった当日の朝のニュースの印象が強烈で、それがいつまでも心に残っているんです。
写真は本当に素晴らしくて、特別ですよね。
よく「天は二物を与えず」と言いますけれど、
星野さんの場合は写真と、それを高い次元で補うエッセイ群の
両方ともとても素晴らしいところがまた
どんなに時間が経っても褪せない魅力なのではと思ってます。
僕が星野さんのことを意識するようになったのは、亡くなられてからですね。星野さんの評価って、亡くなられてすごく高くなっているように思います。
今年になって、星野さんが亡くなられた時に連載していたSINRAという雑誌でレクイエム特集が組まれているのを見つけたりしたのですが、その前の号とか読んでも他の動物写真家よりもスペースが悪いくらいなんですね。one of themの扱いです。
本当に彼の写真、そして文章、そして感性?はすごいと思います。それを早くから気づいていたいづやんさんもすごい。
Posted by: sloth : 2005年08月10日 00:45評価は生前に「木村伊兵衛写真賞」を受賞しているので、
すでに確立されていますけれど、
やっぱりある意味劇的な亡くなり方により注目が増したのは確かですよね。
自分も亡くなってからより一層作品に思い入れを感じようになりました。
「SINRA」のその号は発売日に書店で買いました(笑)
この雑誌、大好きで何年も買い続けていたんです。
今も何冊かは捨てられずに取ってありますね。
池澤夏樹さんの追悼文がとても良くて、泣きそうになりながら読んだ記憶があります。
星野さんの記事の扱いに関してですが、自分は小さいとは思ってません。
記憶違いでなければ同じ頃に「家庭画報」で「森と氷河と鯨」の連載も同時に進行していて、
あれ以上の分量を書くのはムリだったのではないかと思っています。
星野さんは常にフィールドにいて撮影されていたでしょうから、
あれで精一杯だったのではないでしょうか。
それと、「SINRA」の巻末近くのあのスペースは、星野さんを始め、
今森光彦さんや、池澤夏樹さん、村上春樹さん、吉野信さん、
原田純夫さんなどなど、錚々たる面々がその時々で連載を持っていました。
言うなれば、雑誌の前半でどんな特集があっても、
雑誌の基本的な部分を底からどっしりと支えている、
そんな栄誉ある場所だったのではないかと思っています。
まあ、単なる想像で、偉そうに語ることでもないですけど(笑)
また他の写真集や本を読み返してみたいと思いますね〜。
Posted by: いづやん : 2005年08月10日 02:39僕は星野さんの写真は生前から見ていましたが、
それほど強く惹かれることはなかったです。
思い返してみると、僕は文章から惹かれていきました。
「旅をする木」や「イニュイアック」を読んでから、
彼の写真を見直すとなにか深いものを感じるように思ったのですね〜。
星野さんの写真はどちらかというと静かなものが多いですよね。
学生の時には、どちらかというとダイナミックな写真にひかれていましたねー。
「SINRA」での扱いがあまりよくなかったというのは、僕のえこひいき的な見方がおおいにありそうです。
星野さんは特別だみたいな。
今森光彦さん、池澤夏樹さん、村上春樹さんなど、僕も好きですし、彼らの作品もすごいなと思います。
確かに、錚々たる面々ですね。
これだけの人が集まっているのですから。
ただ、僕は星野さんの写真はレイアウトによってだいぶ伝わり方が違うような気がして、
ページいっぱいでの扱いや余白がほとんどないというのが気になってしまいました。
連載は、文章が主だったので、考えてみれば仕方がないことですね。
ちょっとズレたことを書いてしまったみたいです・・。
> ページいっぱいでの扱いや余白がほとんどないというのが気になってしまいました。
それは編集者の力量でしょうね。
星野さんにはどうしようもない部分もあるでしょう。
写真も、文章も、彼でなければ表現できなかったものとして、
どちらも素晴らしいものですよね。
SINRAの存在は星野さんという稀代の表現者を
世に広く知らしめた雑誌として、自分ではとても評価していますよ。
彼の扱いがどうであれ。
ちなみに自分は「ALASKA 極北・生命の地図」が衝撃の出会いでしたね。
一枚一枚の写真に鳥肌がたったのを覚えています。
文章から入るのももちろんありだと思いますね。
そういう多面的な魅力があるのも、他の写真家にはない良さでしょうね。
TBありがとうございました。
こちらからもTBさせていただきます。
私にとっても、8月8日は特別な日です。
今年は行けませんでしたが、何度かお墓参りにも行かせて頂いています。
こちらこそ、TBありがとうございました。
お墓は確か、市川霊園にあったんですよね。
一度はお墓参りに行きたいと思うのですが、
行けば管理の方とかがいて、分かるのでしょうか?