池澤夏樹の小説を読もうかなあと本屋の棚を眺めていたら、この本を見つけた。要は、沖縄に関する色々な事柄を紹介・説明している「事典」であるのだけれど、淡々と事柄を説明していく味気のないものではなくて、各項目に様々な人がコラム形式で説明を加えている、というのがこの事典の大きな特徴になっているのだ。
執筆陣も結構錚々たる面々である。知らない方が圧倒的に多い(きっと沖縄では有名なのだろう)のだけれど、編者の池澤夏樹に始まって、作家(?)の椎名誠、キャスターの筑紫哲也、漫画家の水木しげる、作家の陳舜臣、元沖縄県知事の大田昌秀なんていう名前もある。もちろんこれらの方は多彩な執筆陣のほんの一握りで、総勢102人が沖縄への思いを、沖縄の色々なモノを説明するという形でもって語っている。
項目によってはとても大まじめで、学術的でさえあるけれど、その一方で、可笑しくて吹き出してしまうような物語と共に項目を語るものある。椎名誠の書いた「泡盛」の項目の一部はこうだ。「・・・島にいる間、村のオババに泡盛の牛乳割りというのをおしえてもらった。氷を入れ、五対五で割って飲むとうん、なかなか説得力がある。スタッフにこの飲み方をすすめ、みんなして深夜までコップを重ねていた。しかしこの牛乳割りの酒というのは、遠くから見ていると、いい歳したおとっつぁんが深夜みんなして車座になり牛乳を激しく飲んでいるようで少々気持ちが悪いだろうなーと思う。・・・」
食、言葉、建築、宗教、祭り、生活、動植物、人物、織物、音楽、などなど、書かれている分野は多岐にわたる。それでもおそらくこんな本一冊では分かることなんてたかが知れているだろう。だけれど、沖縄の文化の大まかな側面を楽しく知るにはうってつけの一冊ではないだろうか。同じ南の島なら小笠原に行ったことがあるが、沖縄は日本とは違う文化を今も持っているという部分に今は強く惹かれるようになった。
行ったことが無くても、ちょっとした沖縄通気取りにさせてくれて、それを実際に確認しに行きたくなるような好著だ。
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>> オキナワなんでも事典