見たのはもう一ヶ月半以上前になる。何か書こうと思うのだけれど、うまく言い表せない。見終わったあと、頭の芯がしばらくしびれてなかなか言葉にできなかった。初めての経験だった。こうして書いていても一体何を書いて良いのやら。
「誰も知らない」は、実際にあった、子供置き去り事件を元に作られている。父親の違う長男、長女、次男、次女の四人兄弟。母親が一人で育てている。ある日母親は「仕事で出張するから」と言い残してそれきり帰ってこなくなってしまう。子供だけの生活が始まる。
子供だけの生活は過酷だ。だが画面からは、こんな状況だから大変です、母親がいなくなってからこれだけ経ちました、という説明がほとんどない。ただただ淡々と日常が過ぎていく。だが、観る者は画面の端々に映し出されるなにがしかの兆候や、目印を拾い上げていくことで、状況の深刻さと子供たちの心の機微を知ることになる。
その兆候は、あまりにさらりとしすぎていて、見逃してしまいそうだ。だけれど、いやだからこそ、観ている者は、今何が起こっているのか躍起になって探し出そうとするだろう。例えばそれは、いつの間にかちびてしまったクレヨンだったり、気が付けば落書き帳代わりにされている請求書だったり、小さくなった服だったり、ベランダから地面に落ちる鉢植えだったりする。
そうするうちに、物語の最初の淡い好奇心はぼんやりとした焦燥へと変わり、最後にはあきらめを含んだ絶望感が静かに心を覆う。こんなに淡々としているのに、このすごい求心力はどうだろう。脚本とカメラワークの見事さというのだろうか。
子供たちの演技も光っている。意識的にそう演出をつけたのかどうかは分からないが、抑え気味に、だが実際の子供ってああだよな、と思わせる無邪気さがいい。そして主演の柳楽優弥のあの目がいい。
・・・やっぱりうまくこの映画の良さを伝えられそうにない。「考えさせられる」という次元で語れる映画ではない気がする。画面の中に、これから子供たちを待つ運命の兆候を探し出そうと躍起になって、目と心を総動員してくたくたになって、わかったつもりになって、でも最後の子供たちの後ろ姿に何と言葉をかけてあげればよいかもわからないまま、映画は終わった。
傑作だと思う。観てください。
DVDが出ます。気になる方はこちらをどうぞ。
>>誰も知らない
こっちの地元紙に観た人のコメントが載ってて、観たいなと思ってたんだ。いづやんのつぶやき読んだらますます観たくなったよ。柳楽優弥クンって何かの賞をとったんだよね。あーあ映画館ないんだな、大田原・・。
Posted by: やまえ : 2004年11月03日 00:19見た直後にメールもらって、いつここに載せるのかと思っていたがずいぶん時間がかかったねぇ。
おいらは見た後に映画館から出たらちょうど真夏の昼下がりの休日で、まぶしい太陽の下親子づれがわらわら歩いてたのよ。それがすごい変な感じで、いつもの風景が待ったくべつのものに見えました。
その後3日間くらい、頭からはれなかったよ〜
好き嫌いありそうだけど、とりあえず見ておいてほしい作品だよね〜
> いづやんのつぶやき読んだらますます観たくなったよ。
いやいや、こんな拙文で見に行きたいと思ってくれるなんて申し訳ないです。
普通、映画を見ると
「この場面がよかった」「あのアクション、台詞が好き」と簡単に言えるのに、
この映画に関しては、それが思ったように口から出てこない。
それでもむりやり「見た」という証拠(?)を残したくて書いたんですけどね、
こうして読み返してみて何が言いたいのやらさっぱり・・(笑)
もっとうまく頭を整理して書けるようになりたいですね。
でも映画は間違いなくおすすめです。
> 柳楽優弥クンって何かの賞をとったんだよね。
カンヌの主演男優賞ですよ。史上最年少です。すごいことです。
> 見た直後にメールもらって、いつここに載せるのかと思っていたがずいぶん時間がかかったねぇ。
おお、コメント貰えるとは思ってなかったよ。ありがとう。
そうね〜、にのは見たから分かって貰えると思うけど、
人に何がいいのか伝えづらい映画だよねぇ。
でも見たら必ず心のどこかに刺さる映画ではないかと。
で、どうやって伝えたものかと思っていたら、こんな時期に。
> いつもの風景が待ったくべつのものに見えました。
なんとなく分かるわ、それ。
オレは見終わった後しばらく足が地面に着かないような、
ふらふらした感覚に襲われた。
> 好き嫌いありそうだけど、とりあえず見ておいてほしい作品だよね〜
いやいや、ここは前にオレがにのから受け取ったメールのように、
「今まで見た邦画で一番だ」と言い切ってしまってください(笑)
観ましたよ!
じんわりとしみてくる映画でした。
パンフも読みました。黒柳徹子他コメンテーターが
自動虐待やストリートチルドレンうんぬんと
コメントしていましたが
私は、この映画のテーマは他のところにあると感じました。それは「親はなくとも子は育つ。」というか、
子供だけが持ち得ることの出来る
深い心の世界がかかれていると思うのです。
ラストシーンの後ろ姿には救いのようなもの
を感じます。
柳楽君の存在感もすばらしい!ですが
YOUのゆる〜いお母さんっぷりも名演技でした。いや、素?
おお見ましたか!
> 子供だけが持ち得ることの出来る
> 深い心の世界がかかれていると思うのです。
なるほど。確かにそれは言えるかもね。
> YOUのゆる〜いお母さんっぷりも名演技でした。いや、素?
あれは素だろ〜?(笑)
「アンタのお父さんが悪いんだからね〜」という台詞は
「うわYOUなら言いそう!!」と心で賛同した人はオレだけでないはず
TBありがとうございます。
この映画は是枝監督のトークショー付きの回を観ました。
ほんとうは5点満点にしたかったけど、
監督の話を聞いていたら下がってしまいました。
> kossyさん
あら、そうなんですか?
どうしてだろう。
でも映画そのものは本当にいい出来ですよね。
柳楽くんの次回作が気になりますねえ。
Posted by: いづやん : 2005年03月14日 23:35トラバさせていただきます。
多分、〜日後、〜ヵ月後などの説明がなく淡々と撮られていた映像だから、妙にリアルで吸い込まれるように見ていたような気がします。
傑作でした。
TBありがとうございました!
説明は、ホントに極限までそぎ落とされてましたよね。
そこに監督のストーリーテリングの手腕を感じます。
今見てらっしゃる方はほとんどがDVDやレンタルビデオでしょうけど、
この映画はぐっとのめり込んで見て欲しいので、
家の呼び鈴の電池取って、電話を切って、カーテン締めてから
画面に向かって欲しい、そんな映画ですね。
やっと観た!
うまく言葉にできないよね。
子どもを産む前に観てたら今の感じ方と違うだろうなと思ったよ。
おお、やっと観ましたか!
確かに感想をすぐ言えない不思議な映画ですよねー。
子供を持っている人が見たらまた違うんでしょうね。
あるいは子供と一緒に観たらどうだろう。
あいな様は大きくなりましたか?
Posted by: いづやん : 2005年08月02日 23:56