2003年02月05日

ひき続き公式本とか

この「ロード・オブ・ザ・リング 公式メイキングブック」は読めば読むほどに、この映画に関わった人たちの気持ちが伝わってきて、自然と顔がほころんでしまう。モノを作るときのこだわり(行き過ぎて強迫観念という場合もあるけども)というか愛情を、どの部門の人からも感じることが出来る。

そういう話ししか載せてないんだと言われてしまえばそれまでかも知れない。表向きだけの話しなのかも知れない。けど、出来上がった映画が、そうでないことをちゃんと見ている人には伝えている。

全てのモノに共通している精神、それは「全てはリアルに」だ。ファンタジー物と聞いて、なんだか綺麗でふわふわしてたり、余計な飾りがついてたりするような衣装や小道具大道具を想像するかも知れない。でもこれはファンタジー物ではない。監督のピーター・ジャクソンは「今の人類が歴史を書き記す前に現実にあったことを映画に撮っているんだ」と言っている。つまり、幻想ではなく、現実の歴史物を撮っているのだと。

現代の話しだったら、その辺に売っている物を買ってきて、セットに置けばいい。ちょっと前だったら、博物館に借りるなり出来るだろう。でも何千年前の、それでいて実際の歴史として作る場合は? 全部一から作るのである。コップ一個、イス一脚、その他画面に映る(時には全く映らない)ものはなんでも、である。しかも、いい加減にではなく、その国や種族の文化の様式を考えて。武器なんて、カッコよさ、ではなく、ちゃんと「相手の腹にぶち込む」ためにはどう作られていないといけないかを最初に考えたそうである。だから、主人公達の武器や身に帯びる物はあんなに質実剛健で、かつ本当に相手を倒せそうなものなのだと感心する。実際、何百という剣がほぼ本物として作られているので、15ヶ月の撮影中に壊れたのは、20も無かったそうである。

そうやってスタッフ全員が、何千年前の「歴史」を「現実」として描き出そうとしている。そういう気概がこの本から伝わってくる。そういうスタッフの仕事を目の当たりにしたキャスト達も、自然と演技にのめり込んでいく。「タイタニック」で船長役だったバーナード・ヒルは、今回第二部「二つの塔」でローハンのセオデン王役だけども、小高い丘の上に建てられた王の宮殿を見たとき、「息をのむような絶景が広がっていて、我々全員の精神が鼓舞されるようなスピリチュアルなものがあった」と絶賛したとか。

建物や場所も、極力CGに頼らず、セットを作れるところは作る、ダメなら一センチまで寄っても細部がよく分かるミニチュアを作る。スターウォーズなんて、今はどれくらいのCGが画面を覆っているのだろう? やはり実際に形のある物を撮影した方が説得力が違う。映画を見たときに漂う現実感の違いを感じる。

エルフだ、魔法使いだ、と聞いて拒絶反応を起こして見ないのは、損だと思うのはオレだけだろうか? それは、ゲームとか安っぽいライトファンタジー小説の乱発という弊害から「ファンタジー物=子供の物」という図式が今の日本では出来上がってしまっているからなんだろうなあと、思った。この映画では、魔法使いといえども、簡単に魔法を使ったりしない。監督が「指から稲妻出てるような陳腐な表現は絶対にしたくない!」と言っているのを読んで、この人が監督で本当によかったと思った。

メイキングブックを読んでいる限りでは、二部、三部も期待してよさそうだ。そして、「指輪物語」の映画がこのスタッフで作られて本当によかったと、心から思っている。

投稿者 いづやん : 2003年02月05日 01:15 | トラックバック
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