2003年08月08日

今年もこの日が

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やっぱり、この8月8日のこの日は、これについて書かずにはいられない。今年も星野道夫さんの命日がやってきた。去年は確か、作家の池澤夏樹さんが書いた『旅をした人』を手に入れる顛末を綴ったように思う。星野さんが亡くなってからもう7年も経ったというのに、書店には未だに新しい本が並んでいる。星野さんの文章を新しくまとめたものや、未発表写真集、第三者から見た星野道夫論などなど、その人気の高さが伺える。今年もそれらの本についてでも書こうかと思ったが、最近いささか食傷気味の感が否めない。

思えば、亡くなってから出版された未発表文の本は結構買ってきたが、写真集は生前彼が、自分の写真を自分で選んだものしか持っていない。別に買うつもりがなかったわけではないのだけれど、気が付けば生前に出版されたものより、亡くなった後に出版されたものの方が多いことに気が付いた。

そのほとんどに目を通しているけれど、「これだけは」と思う写真集はやはり『アラスカ 極北生命の地図』だろう。星野さんの代表的な写真集で、写真家なら誰もが憧れる「木村伊兵衛写真賞」を受賞した作品でもある。図書館で初めて見たときは説明しようのない興奮に鳥肌が立った記憶がある。そこには、アラスカの大地で今も描かれ続けている生命の地図、すなわち、金色に染まった芦原に佇むグリズリーや、もの凄い数の群で季節移動するカリブー、仔を育てるムース、彼方まで続く氷河の原、極北の空を舞うオーロラ、そして人の営み、があった。

13年前に初版が出てから、今もなおそこにある写真の数々は色褪せていない。むしろ、彼が生前よく文章に書いていたように「行くことの出来る自然と、行くことは出来ないが想像できる自然を持つことの素晴らしさ」を今も鮮やかに伝えている。・・・ページを手繰りながら、そこから得たものの大きさと、7年前に失ったものの大きさに、思いを馳せてみる。

投稿者 いづやん : 2003年08月08日 09:57 | トラックバック
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