月曜は予想通り忙しかった。やってもやってもゴールが見えない仕事は疲れが増す。その終わりの見えない仕事の最中、35ミリフィルムを切ってたら、見覚えのある蒼い海と島影の写った写真が何本か混ざっていた。そう、小笠原だった。
それを見た時なぜだか心の底から笑いたくなった。肩の力が抜けた。それの写真はもちろん数日前に撮られたものだろうけど、フィルムの前でイライラしながら仕事に追われてる自分に流れている時間と、そこの写っているイルカやクジラ、蒼い海にも、今この瞬間に同じ時間が流れているんだと思うと、なんだか可笑しくて、うれしくて、少し幸せな気分だった。すぐに行って見ることは出来なくても、彼らや、その土地のことを想像できる幸せ。
写真家の故星野道夫さんは中学の時、通学の電車の中でよく、全然行ったこともないのに北海道のヒグマのことを想像したという。今こうやって電車に揺られているときに、北海道のどこかでクマが生きている、という・・・。自分とクマの間に等しく流れる時間の不思議さ。自分には、そこまでの想像力はないかもしれないから、あの海の蒼さや、イルカの優雅さや、クジラの巨大さを、記憶の中にある経験の力を借りて想像する。そんなことを思ってみたら、心が少しだけ緩くなった気がした。
・・・最後に行ってから4年半くらいか。小笠原は随分遠いところになってしまった。でも、心の中ではまた少しだけ、近くなったかもしれなかった。
投稿者 いづやん : 2003年03月26日 02:37 | トラックバック