白丸健二『百足部落』 東京日の丸文庫
表紙からしてムードたっぷりですね。
その子供は
知らずに百足を
喰ったばっかりに・・・・・
ある日 ある山奥で 蛇と百足が・・・。百足はへびの口の中へ入っ
ていった。しばらくしてむかでがでてきたときにはへびは死んでいた。
こんな感じで始まります
それから十日後。山の遠足で一人はぐれた一郎少年は山奥で灯を見つけ、門を叩き中に入れてもらう。住人は蛇取りを生業とする老人男性で、家中に捕まえた蛇の瓶詰めが置いてある。泊めてもらうことになった一郎が寝ようとすると外から「ヒィー」という叫び声。外に出てみると老人が井戸に何者かを閉じ込めていて、「うるさい黙れ!」と叫んでいる。老人曰く「蛇の大敵を閉じ込めてある」。一郎は「なんだろう?」と思いながらも再び布団へ。気になりながらも寝てしまったところ、夢か現実か、一人の少女が現れ「井戸の石を明日までにどけてもらわないと死んでしまう」と嘆願をしに来る。
気になってしょうがない一郎が井戸に近づくと、中から女性らしき叫び声が。完全に女性だと思った一郎が重しの石を取ってしまったところ・・・・
巨大な百足が!
気絶する一郎。夜明け前ってのにキレて一郎を追い出すオヤジ。
朝っぱらから山を彷徨う一郎。
歩き疲れた一郎は山の中で、鍋をつついている少女に出会い、山ごぼう鍋をお裾分けしてもらう。散々食べた後に少女から衝撃の告白!
「それ百足よ」
ごぼうだと思って食べていた食べ物はなんと大量の百足。ダチョウ倶楽部も真っ青。その少女は昨日助けた百足の化身だった。少女は「あなたはもう百足の性質を持ったのよ。これが私の恩返し」と訳が分からんことを言ってどこかに行ってしまう。。
キャーーー!
ワーーーー!
イッちゃった一郎少年。
百足の化身となってしまった一郎は、遠足の集団に戻ると、いきなり手から手品師のように大量の毒百足を出して、友人たちに投げつけて病気にしてしまう。村で騒動を起こす一郎をこらしめようと村人が集団で山に追い詰めるが、またもや毒百足の大群を投げつけて退散させられる。怒り狂った村人の老人女性は殺し屋二人を雇い、山にいる一郎に差し向ける。
殺し屋は山で何度か一郎を追い詰めるが、捕らえることが出来ずやがて迷い、お寺に泊めてもらうことになる。お寺には小僧が一人いるだけだった。部屋に通された彼らの後ろの障子には巨大百足の影か・・・そうこうしているところ、数人の男たちが桶をかついできてそれを置いて立ち去った。中には女の死体が入っているのだという。薄気味悪いなぁと思っていたところ、桶の中から「いちま〜い、にま〜い」とお菊ばりの皿数え歌が・・。10枚目が無いところで突如、桶が爆発!
キャーーーーーーッ!
なぜかオカマ口調
巨大百足に追いかけられひたすら階段を上る二人。
しかし、一向に上の階にたどり着けない。
それもそのはず。彼らは小屋の横の水車をこいでいるだけだった。
そう、寺に迷い込んだ時点から百足の化身一郎の魔術によって幻を見ていたのだった。完全に狂ってしまった殺し屋を両手に百足を遊ばせながら笑顔で笑って見ている一郎少年。
そうこうしている間に、一郎は村からいつの間にやらいなくなってしまい、その後、彼の姿を見る者は無かったという。
今まで沢山の怪奇漫画・貸本漫画を読んできましたが、この作品ほど全編を薄気味悪さが覆っている作品はそうは無いです。
怖い作品・不思議な作品は他にもありますが、読後になんともいえない気持ちの悪さを感じてしまう作品というのは滅多にお目にかかれません。徳南作品でもここまで気味悪くありません。てことで、貴重な作品ですのでゲットする機会があったらぜひともよんでみてください。
ちなみに白丸健二は橋本将次だと思います、90%。橋本将次は兎月書房の二人集などでも完全に主役を喰ってしまう素晴らしい出来の作品がたまにありますね。